こんにちは、今回芦屋で6月に開業する馬庭と言います。
今回は、治療に関するお話で根面被覆という内容でお話しさせていただきます。
皆さんは、歯肉退縮というものをご存知ですか?歯肉というのは歯茎のことなので、歯茎が下がって(退縮して)、根っこが見えるような状態のことを指します。
過去の論文の報告では、10年くらいの年月が経つと多くのかぶせをした歯茎が下がって、その下の根っこが見えてきた、という報告もあります。
この歯肉退縮が生じる要因として、さまざまな要因が挙げられています。細菌など炎症性のもの、噛み合わせによるもの、また加齢や矯正治療などもその一因として挙げられています。
その中で大きな要因を占めると考えられているものが、歯ブラシの圧や歯の周囲の骨や歯茎の厚みと考えられています。歯ブラシの圧により、歯周囲の組織にその機会的刺激が加わり、その力が過剰であれば、それに伴い歯茎が下がる、という状態となります。
また、そこの歯茎の厚みがそもそも薄かったり、また、その下の骨が薄かったりもしくはなかったりすると、そのような刺激に対して、生体の抵抗性がないため、容易に歯肉退縮になりやすい状況となります。
もちろん、この歯肉退縮の要因は先ほど述べたように複合的に絡み合うため、ブラッシング圧を弱めにした、などの一つの対応をしたから全ての問題が解決して歯肉退縮が治る、というものではありません。しかし、ブラッシング圧のコントロールをしただけで、経年的にそこの退縮していた組織が回復することは過去には報告されています。
ただ、一般的にはその歯肉退縮に対しての治療としては、歯茎を移植すること、具体的には上顎から歯茎を採取して、その薄い組織に移植することでそこの厚みを増すことにより歯ブラシの圧に対して抵抗する組織を獲得する、というのがその治療になります。これを根面被覆と言います。
近年、日本ならず世界中でこの歯肉退縮に対する治療結果をアップしているSNSが散見されます。一昔前までは、あまりメジャーな治療ではなかったイメージですが、私がこの分野が好きな分野であるからなのか近年注目されている分野だと思っています。
ただ、治療介入をする際に、まず考えなければならないことは、治療介入をするか?具体的には、歯肉移植などの外科処置をするかどうかの判断となります。そのためには、まずはどのような原因でそれが起きたか?を追究することから始まることが大切です。つい、その原因を排除しないまま根面被覆を行ったとしても治療結果がうまく行かないことが多々あります。
そのため、先ほど述べた原因のなかから、その原因をある程度把握し、必要であれば、まずはブラッシング圧などコントロールできるものからアプローチをしていくことが重要で、そしてその組織の反応を見ながら、外科的な介入をするべきかどうかを考えるのが大切だと考えています。今回は、歯肉退縮の要因についてお話ししました。
次回は、その具体的な治療についてお話しします。